「書く」で生じるムダを徹底的に省いて、スピードを上げ、仕事の生産性を高めたい方におすすめ
「さあ、書こう」と気合を入れてみたものの、最初の一文が思い浮かばない。書いては消し、書いては消しを繰り返してしまう。
などなど、文章を書きたいけど書けないときのモヤモヤは、仕事の進みを遅くするだけでなく、自己肯定感を大きく下げる原因にもなります。
本書を読めば迷いが消えてモヤモヤはスッキリ。「文章ってこんなにスラスラ書けるんだ」と気分が爽快になるはずです。
「書くのが遅い、何を書いていいかわからない」と手が止まる人なら、組織で働くビジネスパーソンはもちろん、情報発信が苦手な起業家、フリーランスなど、どなたにもおすすめ。
原稿執筆に時間がかかって仕事が溜まる一方だというライターには、バイブルになるのではないでしょうか。
著者は元「遅筆家」で、「ブックライター」の第一人者・上阪徹さん。ビジネス文書に文才はいらない。うまい文章など求められていない。それより、目的に沿って必要な情報を必要な読み手に届けるほうがよっぽど大切。
こうした理念のもと、シンプルで分かりやすい文章をいかに速く書くか。そのためのマインドと手法が徹底解説されています。
読んでいると、執筆とは筋トレのようなものだと感じます。才能で書くのではなく、練習して数をこなせば伝わる文章は誰でも書けるようになることが実感できるでしょう。
速く書くためにまず大事なのは、「素材」を集めること。具がないのに料理をしようとしてもできません。
文章も同じで「どう書くか」の前に「何を書くか」が重要。素材があれば誰でも文章がサクサク書ける。そのことをLINEを例に説明しています。
なぜLINEでは、誰でも、抵抗なく、文章が速く書けるのか?
(中略)「表現」より「用件」が重視されるからです。だから悩むことなく一瞬で打てる。すぐにコミュニケーションが取れる。LINEで交わされているのは、「うまい文章」ではなく「必要な情報」なのです。(P23)
ここでの「用件」「必要な情報」とは、イコール「素材」です。
LINE以外の文章も、「表現」にこだわらず、淡々と「用件」「必要な情報」を伝えようと考えて書くとスピードが上がります。
次に重要なのが、目的と読者を決めること。集めた素材を「何のために」「誰に」届けるかという2つの観点です。
①文章を書く「表面上の目的」を掘り下げて、「その文章を読んだ読者にどんなことを感じてもらいたいのか?」という「真の目的」を決める
②具体的な読者を決める。どうしても読者をイメージできないときは、身近にいる友人や知人の中から「1人」を選んで読者に設定すればいい
この2つの作業を通して、目的と読者がはっきりすると、一気に集めるべき素材はイメージしやすくなります。(P83)
たとえば「新商品のPR文」を書くとします。「PR」がざっくりした表面上の目的ですが、さらに掘り下げると、「買ってほしい」「友達に紹介してほしい」など、真の目的が隠れています。
続いて、これを誰に向けて書くか。「30ー40代男性」よりも「知り合いの●●さん」宛と絞った方がよいということになります。
ではなぜ、「真の目的」と「具体的な読者」を決めると速く書けるのか。それは、どんな素材が必要かがわかるから。
逆に言えば、不要な素材を振り分けられるから、書かなくていいことが選別できるからです。たとえば、仕事バリバリな●●さんにアロマ商品を買ってもらいたいのだとしたら、リラックスやストレス解消の効能を伝えるよりは、集中力アップやアイデアがどんどん出る香りなどを訴求したほうがよいですよね。
これらを実践されている上阪さんの文章はどれも本当に読みやすい。駆け出しの頃は「1日300字」しか書けなかったそうですが、今や「5日で本1冊」。元々速く書ける人ではなかったからこその説得力があります。
文章術の本はいろいろありますが、「書けない」という人が読む最初の一冊としては、熱烈におすすめしたいです。
素材を集める、目的と読者を決めるを実践すれば、「え、こんなにスラスラ書けちゃうの」をきっと実感していただけると思います。
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