「プロのクリエイターが失業してしまうのでは?」と心配になるほど再現性のあるフレームワークを提示。しかしまた、「枠」の限界にも言及し、枠を下敷きにしつつも、「常軌を逸脱した着想」で魅力的なコンセプトを書き上げるべしと解く。学術論文のように誠実なビジネス書。
即レポ①:コンセプトとは、一般には「全体を貫く新しい視点」であり、ビジネスにおいては「新しい価値の設計図」である。
コンセプトという単語を辞書でひくと「全体を貫く新しい視点」(『明鏡国語辞典第二版』)などと説明されています。(P25)
ビジネスにおけるコンセプトの定義
コンセプトは、価値の設計図。
1. 判断基準になる
2. 一貫性を与える
3. 対価の理由になる。(P32)
→対顧客的にひと言にまとめなおせば、「課題を解決するために、お金を払って手に入れたい新しい価値」といった感じ。それを表現する言葉は、既存の言葉と言葉のあいだに落ちている。
即レポ②:コンセプトも「問い」によって磨かれる。
①「部分の問い」→「全体の問い」部分より全体で解決するなら?
②「客観の問い」→「主観の問い」あなただけの偏愛やこだわりは?
③「現実の問い」→「理想の問い」目指すべき理想の変化は?
④「名詞の問い」→「動詞の問い」その行動を再発明するとしたら?
⑤「創造の問い」→「破壊の問い」破壊すべき退屈な常識は?
⑥「手段の問い」→「目的の問い」それを手段にしたら目的はなに?
⑦「利己の問い」→「利他の問い」それで社会はどう良くなるの?
⑧「既定の問い」→「自由の問い」まだ書かれていない価値ある問いは?
(P95)
→「問いのつくり方、磨き方」みたいな授業は小学校とかで必修にしたほうがいいんじゃないか。
即レポ③:ミッション、ビジョン、コンセプトの違いは「そもそも」「いつか」「そのためにいま」
時系列で整頓すればミッション、コンセプト、ビジョンの順番ですが、物語る際は ①ミッション ②ビジョン ③コンセプト の順番に並べます。過去と未来を語った上で、その中心点としてコンセプトを位置づけるのです。そしてそれらを「そもそも」「いつか」「そのためにいま」の接続詞でつなげば3行のスクリプトができ上がります。(P136-7)
→「そもそも」「いつか」「そのためにいま」は、事業紹介だけでなく、ストーリー性に富んだ個人の自己紹介としても使える。これとヒーローズジャーニーの「旅立ち」「戦い」「帰還」のモデルと組み合わせて語ると、強靭なストーリーになる。
その他要点チェック:
インサイトとは「まだ満たされていない、隠れた欲求」のこと
・インサイトを記述する基本構文は「AだけどB」。AとBは矛盾する2つの真理を記入する(P130)インサイト型のストーリーとは顧客を救済する物語である
(中略)困っている人がいる。しかし誰も助けない。そこで手を差し伸べる。つまり・・・と組み立てる。(P130)コンセプトは顧客のインサイトに応えるものとして、そして組織やチームのビジョンを叶える一歩目として、2つの目的のために設計される(P162)
素人が実践で使えるコンセプトづくり、言葉づくりのフレームワークが惜しげもなく披露されている。まさに教科書の名にふさわしい名著。
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